行き摩り

虚構日記

2017/11/17 晴れ

最近昼ごはんがパターン化している。梅おにぎりと鮭おにぎりと甘いパン。こんな量で足りるようになってしまった。食欲の全盛期は中学生だったことと、同じようなメニューを食べて、それでも腹を空かせていたことを思い出した。

 

疲れた。人に思考を伝えることよりも、それに乗せている感情を正しく伝えることの方が難しいし、恐らく、できない。伝えるんじゃなくてこれは押し付けているんだろうな。制御したい気持ちと守りたい気持ちは似ているのかもしれない。どちらも過ぎると縛ることになる。

 

口を閉じないとそろそろ痛い目に遭いそうだ。昔よりずっと軽口を叩くようになり、自分の大切にすべきことに頓着しなくなり、つまり命などを、脅かすようになった。嫌われたって構わなくなってしまった。良い事なのだろう。後ろから刺されさえしなければ。こんなのやめてしまえば良いのに。始めなければよかった。

 

ぼくの記憶力は衰えているのではなかった。世界が唯広く広くなっただけだった。し、往来の物忘れは脳の仕組みによってのことで、仕方が無いのだった。気がつけたので気は楽になったものの、やるせない事も明るみに出てきた。無用に自分を責めたり色々なものに手を出したりせずにすんだことはよかった。それでも押し出されるようにしていつも出ていってしまう重要な記憶がある。ほんのさっきのことも、心に誓って叩き込んだことも、平等に消えていく。脳の形と共感覚に対してぼくはずっと無力だ。

 

どうしても近頃は色んなことに苛々しているなと思う。みんな気付け。みんなも苛々しているぞ。気が付いてそっと離れるかどうにかすれば解決する。それを知らないんだ。そうやってなんとか凌いで、心の健康を保つ。それでもどうしようもない事はある。ぼく悪いのか? ぼくが甘いのか? なんなんだ? 恒久的にあるものに関する苛立ちは、思考から退けるかそのフィールドから去るかのどちらかでしか解消できない。何とかしないといけない。

 

iPhoneⅩを予約注文してこの間入荷した。早速コンビニ受け取りを申し込んで、待っているんだけど、来ない。忘れないと来ないんだろうな。

 

夢はなんだか懐かしい夢だった。昔見た夢と同じ景色だった。こんなどうでも良いことは覚えていられるのに、どうして大事なことが残っていないのか、恨めしかった。

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2017/11/16 晴れ のち 曇り

よく考えてみたら報告をするための場ではないため、ただ単に自分の好む美しさやさみしさを残しておく。

 

大きな出来事といえば、内容証明って有名なのかな。それをやってきた。郵便局に行って¥2,500くらいを支払う。これを出すのに何度も無駄足を踏ませて日数もかかりにかかった。それでも何にせよ終わったから良い。それは。あとはちゃんと中身を読んで従ってもらえるかどうかだ。ぼくたちははやくすむばしょをさがさなくてはならない。

 

時系列順に並べなければならない意味もない。

 

それにしても寒かった。研究は進まない。大学は前よりは行きやすくなった。彼らの悪い部分とましな部分がわかると、こちらもある程度力を入れるべきか否かを考える余裕ができるというか、その雰囲気で、とにかく、前よりは、前よりはといった感じだった。近頃は外殻、幾重もある1番外の殻の表面を撫で合うような関わり方が苦手で、でもそれは今後の多分ぼくには必要が無いことがわかってしまったので、早く大学を卒業しなければいけないのだった。とにかく今はもう一枚殻を装備していなければならない。集団の中の生き物であるためには仕方がないことなので。

 

仕事が急にぱったり消える体験をぼくと同じ年の人間がどのくらいしたんだろうか。

 

風は冷たい。足を進めることを考える。虚無を感じる余裕が欲しいのに今はいっぱいいっぱいで無理。何に構っている場合でもないはずなのに、余計なことをして首を絞めている感じがする。あーあ。口の中に籠る。この吐息がそのうち白くなる。外に出ることは愚か家からも布団からも寝巻きからも出られなくなる。感嘆符が減る。炭酸が消える。人と飲むフラペチーノ以外の冷たい要素を見たくなくなる。そのうち雪しか待てなくなる。音が消える。何が正解なのか。美しさが往ぬ。

 

写真を撮って絵を描けたらそれで良いのにそれが遠い。人と話すのではなく好きな人たちと話したい。話の通じる仲間たちと喋っていたい。家族を思い出すのではなくて家族を肌の側に感じてみたい。今月には引っ越したかったなあ。もう直ぐ里帰りができる。ひとり連れて。

2017/08/02 曇り

心の隙間が狭くなって、パーソナルスペースは広くなった。気になることは増えたけど、自分の全てが間違っている訳では無いことを言い聞かせられるようになった。力が付いて、でも持久力は落ちて、内蔵は弱くなった。生きているというのに、生活をするだけで苦しい。とても苦しいか、少しだけ苦しいか、今まで生きてきた生活には、その違いしか無い。

 

 新しいネットワークサービスに触れたがる気持ちが大きい。この間は、オファーのくるサイトに名前を書いた。長い文章を書くことは好きだった。

 

あなたがあなたを形成する決定的経験。人生の中で一番華やかだったのはいつだろう。彩があったときは。丁度エントリーシートを書くように埋めていく。僕の人生の彩はいつなんだろう。記憶を辿っても、リンクする色がぶちまけたように広がるだけで、それは鮮やかな彩とは言えない。感情や映像の記憶は誤魔化されていて、暗雲が広がっている。少しだけ目を細めてみることができるようになった分、自分にも、他人にも、彩を感じることは少なくなった。

 

感情だけがふと蘇る時がある。その感情と、フラッシュのようにたった一瞬だけ見えた色があって、大体はあとを辿ることができない。もどかしさを感じることもなくなってきた。気持ちの良い感情のはずなのにそれを思い返すことも懐かしむことも出来ない。そんな事が増えている。どんどん味の薄い時間が増えていく。

 

忘れたいと思ったことを忘れることが出来る。忘れたくないこともどんどん抜け落ちていく。弊害なのかもしれない。情報の数は寧ろ減ったはずなのに、追われることだって少ないはずなのに、どうして忘れるのか。約束も決め事も心に誓って覚えていたいのに、何かに書き記さないとそれも出来ない。人間としての機能を失っている。

 

仕事の絵を描いた。報酬はない。

 

必要とされることは人間にとってとても重要なのかもしれない。何が自分を必要としているのかを、正しく見つけることは難しい。心にK100、100%のレイヤーが何枚も重なっている。見たくないものは筒抜けて見えるのに、本当に欲しいものはいつも汚れている。手に入るまでに自分で泥だらけにする。往々にして、みんな同じことをしている。

 

たまらなく日本人だ。不条理の中でしか生きていることを感じられないのだ。損をしている。明日は朝ごはんを食べる。何かを摂取しないと、肉体は消えるんだ。

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2017/07/29 曇りのち雨

とんでもなかった。目覚まし時計の止め方がわからなくてベルの真ん中を指で押さえつける。肘で体を起こして頭を振る。なんとなく気持ち悪い気がしてスマホを見る。7時。

 

なんだか何もうまくいかない。何もかもよくない。気持ちの良いこととかけ離れている。ガトリングガンのように雪崩れる不快感がいろんなものを殺していく。決して、僕が生きることに意味や価値やそういうのを見出したいわけじゃない。なにもない。何も無いのが嫌なので周りに何かを作るしかない。湿気が倦怠を誘う。髪を固めて家を出る。今日の1日をなんとかする。なんとかする。その繰り返し。

 

一歩進むと何かにつまづいている。すっきり歩いていると思ったら掬われる時もある。自動ドアだ。存在以外は意に介さない。時々虚無の僕は、たべものも買えず、結局、生から遠ざかる。煙草の煙が吐き気を誘って、身体の中に入れたゼリー飲料が滅茶苦茶になる。出鼻を挫かれる。きっと今日もつまづく。必ず何かがある。

 

 雨が降った。結局自分で誰かに仕事を強いないように走り回っただけの1日だった。不毛だ。仕事はうまくいかない。仕事は何も生まない。暑くて汗を拭う。汗をかくのが珍しいので正しい向き合い方がわからない。

 

飯を食った。

 

何かを生み出さないと生きていけないからだだ。人に善や良心を求めるのは正しくない。彼は口酸っぱく「やめておけ」と言う。そうだなあ。僕はきっとどうにかなる。どうにもできない。

 

大学のことは何も進まない。教授は連れない。僕は何やら軽んじられやすい。人とのコミュニケーションを同じ方向からしかできない人、攻撃的にしかなれない人とは、上手くやれない。研究なんて名前をつけなければ良いのに。

 

味のわからないという、本当に何も喋れないという、その感覚はやりづらかったけれども、それは伝えることに対する本質で、僕の共感覚の一部に近い。

 

 

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2017/07/07 晴れ

何かになりたかった。そういった気持ちを持ったままだ。溶けても溶け出さない氷をグラスに入れる。きちんと冷やした水を飲む。それを命の代わりにしながら、何かを削ってものを作るのに、僕は何にもなることは出来ない。絵を描く時間が永遠に感じられる。このまま死ぬことがなければ。

 

電話がきた。18時以降に電話がかかってくる約束だったのを思い出した。彼は私に地獄を教えた男だ。矢鱈明瞭な声が同じ人間だとは思えなかった。地獄の最中にいた僕は彼が何を言いたくてわざわざ電話の約束を取り付けたのかが分からなかったし、同じ地獄の住人として楽しみにしていた。

 

暑さから指が動かない。料理をしながらイヤホンで彼の声を聞く。僕に見せずにして自分の自信を消費しながら生きていたらしい。「誰よりも自信が無かったことに自信があるんだ」。変化したのだと。それから、同じ変化をみんなに与えたいのだと。そんなことを2時間ずっと語っていた。この男が言っていることは1から10まで理解出来た。ので、8月の予定が決まってしまった。それまで生きていればやっと僕のブラックボックスは救われる。僕のあの時間にやっと肉がつく。

 

 虚無だなあ。何も無いことを感じながら梅肉巻とオクラサラダが出来ていた。引っ越す前と同じ食事がしたかったんだろうか。夏バテレシピというもので、夏にそれなので、なんの特徴もなく、ひたすら虚無だった。帰宅した彼女と食べる。味が悪くない。虚無だ。

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2017/06/28 雨

カーテンが開いたままの部屋に光が。目覚ましを止めて一人だけ起きる。半分だけ夢の中に置いてきたような。意識が今日も変に欠けている。

 

自分に優しくすることと、自分を甘やかすことの違いがわからない。身体は起きている。卵が中に平たく入っているパンを食べる。賞味期限はおよそ1年前位からほとんど気にしなくなった。賞味期限よりも好みを。値段よりも哀愁で。回顧が自動的に行われる。

 

外は雨だった。押し出されるようにして歩く。知覚することが疲れる。何だって良いと思って飲み物を選びに入ったのに、いつもは手にしないミルクティーを簡単に選びに行く。その時口にしたい柔らかさがどうして分かるのか。その記憶はどこからやってくるのか。僕の記憶は色だ。僕は色。

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2017/06/12 曇り時々雨

待ち合わせ時間の決定が当日。どちらかは必ず遅刻して来る。

 

顔を合わせなくなって暫くになる相棒と、漸く飯を食う時間が出来た。手渡したい物を持って勇み足で池袋に着く。華々しかった、画面の中だけの街は、今では庭のように通い慣れて、いつからだったか、こんな風にここで待つことにも、慣れている。下から覗き込まれるようにして現れた彼女は、相変わらずといった様子だった。声も笑顔も心地良い。いつになったら歳をとるのか。相棒と会う時、余り挨拶を用意しない。しなくても良いのはこいつくらいだから、私はそういう時のために、気を抜く。私は、池袋ではここがパスタが美味しいのだと言って、店に連れていく。こんな未来が想像できたか。

 

創作の話を、口に出すだけですぐに理解してくれるのは1人だけなので、思いつくままにそれを喋って、食べるものを注文する。現況報告をしあって(最近どうなんだ、という言葉で始まるものではなかった)、二人して頼んだカルボナーラを早々に食い終わって、三時間、喋り続けた。

 

相棒は、私が本当に怖がりで、自衛が好きで、いつも死にたいことを知っている。ほかの誰も知らないような恥ずかしいことも。だから恐らく、誰よりも気の置けない人間で、肩の荷が降りる。仕事、大学、周辺の人、その他のコミュニティで私が恐怖している、何に恐怖しているか、それを初めて言ってしまえたのも、その所為だった。多分それを聞いておざなりにしないのも、笑わないのも、私という人間の恐怖心のあり方を理解して言葉を返してくるのも、相棒しかいなかった。そう出来るのが私の今までの人生でこいつしかいないのを、私は多分今日気が付いた。溜まるだけだった泥水が、細い逃げ道を得ている。

  

死んだら、今までの私の絵を、横並べにして大桟橋に張り出すらしい。まずい、まだ死ねない。「死にたくない」と口に出すことには、腹の底を抉られるような孤独感があり、腹の底の溜まり水を捨てるような開放感があった。

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