行き摩り

虚構日記

2017/05/11 快晴

「僕の思うところでいう田舎といえば南なので、今日は1日、南下しているような日だった。暑さといえば夏だし、夏といえば南で、日差しといえば海だった。赤虫と言えば田舎で、コンクリートといえば陽炎で、それこそが夏だった。雲の低いのも、分厚い風も、土と葉っぱと海底のような匂いも全部それだった。そして夏は、疲れる。

 

熱線は皮膚を捲るような角度だ。真っ直ぐに差し込んで、僕の項と、七分袖だけ、どうにも助からない。陽炎はまだ息を潜めている。僕は人差し指と親指の肉で水をあけた。こめかみが擽ったい。汗が、た、た、と落ちていく。

 

夏というのはつまり記憶だった。僕の頭の中には、いつも何かの濁流があって、それが、夏の間は夏にすり変わっている。とても重大なことだ。塀を登る蔦植物が瞬く間に積乱雲に喰われていく。その光景は心地よくて、言わば歌だった。ファルセットが脳の後ろを突き抜けていく。無言の僕の耳殻に響くのは、恐ろしい事に女声だった。」

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2017/05/09 曇り

夢。1人ずつ、罠に嵌めていく。何食わぬ顔をして。憂さ晴らしだ。表彰台のような、マイクスタンドの前、私の場所だったはずの、そこに私も立ちたかったのだ。未練。次は仕返しのように、知識問題で命を奪われる舞台だった。

 

あまりにも気圧が影響していた。晴れだった昨日の朝からずっと頭痛がしていたのに、今日は気圧で更に頭痛が酷い。一日これと付き合うのかと思うと頭が痛くなる。画面を見る元気さも体力も無く、眼球は奥が痛むし、原稿を進められるような体調では少しもなかった。

 

今日はもう駄目な日だ。できるだけ家事をしてバスに飛び乗る。危うく乗り逃しそうになったのでそう思った。腹が痛い。頭もまだ痛い。小学生が夕方の押しボタン式横断歩道(いかにも田舎ではないか)の前に溜まっていた。初めて、即時式のボタンでないことに気がついた。私が夜しかボタンを押さないことにも。

 

今日のことは一ヶ月前から約束されていたことだった。されていたというのは、今日は高校の頃からよくしてくれている後輩が、酒を飲みたいというので、それでは、と店を用意したのだった。実に一年ぶりの再開だが、顔を合わせてしまえば、私は生徒会長で、彼女も生徒会長だった。

飲みの席は楽しかった。「ビールは飲めない」と言うので、「そんな不味いものは飲まなくても良い」と、サワーとカクテルを飲むことになった。話はそれなりに弾んで、相手には彼氏はおらず、男にも気持ちが悪くなってしまうということを知った。私はそれを慰めたし、私もそれで慰められた。大人になったのだと思って、馬鹿だ、もうずっと大人だった。そうやって2時間は1コマよりも早く過ぎた。また、LINEで私は「やっぱり良い人」なのだと言うことも知った。後輩にとって「良い人」であれたのは、良かった。

 

エナメルの合皮靴を脱いで、買ったばかりの皮のベルトを緩める。頭の痛さが割増ている。同じように頭痛に唸って転がっている彼女の瞳には宇宙。教えてもらったことだ。覚えておきたいと思ったものはなるべく覚えておきたかった。

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2017/05/02 晴れ

健康診断をする部屋はどこだっけ。施設には毎日のようにくるのだが、違う棟になると、突然に分からなくなる。すれ違う人たちはみんな忙しそうだし、スーツを着ている。もう、いつもスーツを着ているのも当たり前になってしまった。こんな社会では無理もない。A-5、この部屋だ。ノブを回して慎重に入ろうとする……と、名前を呼ばれる。「はい?」

 

「君、さっきは危なかったですよ。次、同じことがあったら」

「はあ……すみません」

 

威圧的な口調だ。近頃の周囲の人たちはいつもこうだ。自分が自分の命の保証を出来る、というだけで、あらゆる権利が与えられているようなものなのである。サングラスの向こう側に全て隠して、長身が私のことを見下ろしてくる。心を握り潰されるような気持ちだ。知らぬふりをして、会釈をする。

 

扉を開けると、拳銃を構えた列が3つあった。またこれか。彼らの視線の先には簡易的な的がある。もちろん皆一様にスーツ。「すみません、通ります」大声で、前を横切る。自分が撃たれても文句は言えないから、せめて存在を主張する。誰も逆らえないのだ。

 

診断申請書には、まず、名前と、住所の欄がある。私は懐からボールペンを取り出す。緊張して名前を何度も書き損じた。転居はしていなかったので、住所の欄は未記入で進む。命に保証を持ってもらえない社会は大変だ。健康診断を受けるだけでも、「命の保証は致しかねます。ご了承ください」のチェックボックスにレの字を入れなければいけない。

 

それから、直近で食った飯を2日分記入する。オムライスと、唐揚げではなくて……ハンバーグと、半ラーメン、とんこつだ。それから一昨日は寿司。なんだか文字がラーメンの麺に見えてきた。こんなぐにゃぐにゃで、書類として意味があるのか? 醤油のつゆに浮かぶ麺を啜る。左隣のデスクで、女の子たちが楽しそうに記入している。私は1人で、無茶苦茶な気持ちになる。

 

もう一度記入し直して、漸く、一番右の質問欄に到達する。早く書き終えてしまいたい。

 

「昨日、一昨日に果たして意味があったのでしょうか。」

 

ばかばかしい! 私は声を出して言ったし、笑った。拳銃を構えた人達が驚いて発砲した。意味がなかったらなんだというのだ! 意味を求めないのは貴方達じゃないか。人の命をなんだと思っているんだ。私達はせめて殺されないように、実力者に媚を売るしかないんだ。そうやって生きることに意味が? あるわけない。

私はボールペンを持ち直して、3倍くらいの大きさの字で書く。

 

「人と関わることの大切さを確認しました。また、……」

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2017/04/29 晴れ

笑ってほしいのだが今日は早朝に起きた。支度は前日に済ませていたし、起床して服を変えて、多少髪なり何なりいじって、寒いけど家を出る。緊張して胃が気持ち悪い。バスも電車も何で揺れるんだろう。朝早いのにどうしてこんなに人が多いんだろう。降りるとすぐに分かることだった。同じ場所を目指している人たちだった。超会議。

 

とにかく気持ちが悪かったのでさっぱりしたものを食べたくて、レモンケーキと、ホットミルクで朝食にする。でも失敗だった。美味いけどこれはご飯じゃない。なにか重大なものを忘れていそうだった。首筋の太い血管が詰まってしまったような気分がしている。

 

ほら、ほら、と時間に足蹴にされるように準備をして、スペースに敷き詰められるようにして並ぶと、いつの間にか始まっていた。奇妙な感覚だった。昨日は、こうなると泣いてしまうかもしれないとずっと考えていたし、今朝も、パイプ椅子に座ってからもそう思っていた。し、初めて自分のものを手に取ってもらった時に、陳腐だけど、非常に、込み上がるものがあった。私がもし、いつも幸せを単純に感じることが出来たら、きっとこの心がずっと続いていたのだろうし、それはとても幸せなことなんだろう。こっそり錨の先をみてやり過ごす。

 

もう元気がなくて体力もなかったので、衣装に着替えるのは早々に諦めて、後は私の友人を待った。サークルとして入場した私達は、思いのほかすんなりと入れたし、真っ直ぐここまで来れたが、彼らは違う。今日は晴れているし、水を飲んでいるか、飯は食ったか、そもそも楽しいのか? など、奇妙な浮遊感に苛まれながら、それでも多分浮いているだけ、私は楽しんでいた。浮かれて待っているのだ。その、肯定的な言葉がなければ、そのままでは私は腐って何処かに消えていただろうと思う。恐らく、ものを作る事も早いうちに辞めていた。燻って潰れてしまう恐怖は、目に見えて触れてくれる人が本当に数人いるだけで何とでもなるし、構わないのだという。私の場合も、本当はそうなのかもしれなかった。時間いっぱいとにかく忙しく過ごして、友人も迎えて、でも私はあまりブースを留守にはできなかったので、一言二言交わして、遂にイベントは終わってしまった。

 

帰る。一日中失言ばかりをしていた私の4/29は終わる。終わるというのはさみしいことだ。一日ずつ死んでいくのだから、なるべくなら私の生きがいを終わらせないようにしたいと思った。まだだめだ。

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2017/04/16 晴れ

昨日と似た夢だった、私が頑張る夢。でも私は決して弱くなかったので、気分はよかった。太刀打ちできるというのはとても気分が良いなあ。

 

夢の内容を全然覚えてない。多分、今日は横浜に帰るから、目を覚ました途端に浮ついてしまって、それで、数値がこう、0になるのが早かった。夢は暫く時間を使ってずっと追いかけていないと忘れる。

 

昨日、どうしても必要なことがわかったので、横浜に着くなり、電気屋でスタンドマイクを買った。ステミキは、私が全く上手く使いこなすことの出来ないものしか無かったので、もうAmazonでなんとかする。飯はヨドバシカメラの下、ぎをん椿庵で食べた。これが非常に美味しかったが、調子に乗ったので大変満腹になった。甘味も美味しい。抹茶フロートがつらい。

 

 というか本当に2人でいるとそれだけでものを買いすぎる。全く何も買う予定なんてなかったのに3COINSで5,000円くらい使って、うわあと思った。使うものしか買わないから良いんだけれども、ちょっと、また、2人して笑ってしまった。ららぽーとでも何も買う予定はなかったのに、もう、これでもかと言うほど服を買った。最早面白くなってきた。自重しよう。

 

勤めていた靴屋ではみんな、大層歓迎してくれた。というより、普段は1人で店舗を管理するので、当然1人しかいないと思っていたのだが、これが複数人いるので驚いた。今の地元で何も購入してこれなかったので、さっき買った横浜土産を渡す。それから、必要な書類を仕上げて、挨拶を軽くした。隣のラーメン屋で夕飯を食う予定だったのが、今日は偶然休業で叶わなくなって、突然空腹が萎えてしまって。帰ります、ちょっと遠いのでと言い訳をして、帰路についた。これ以上いると帰れなくなる。寂しくて帰れなくなってしまうのは困る。私は明日大学なんだ。家族は、「行こうか?」、「いや、用がないならいいよ」とのことで、もうそのまま帰ることにした。帰りの電車は運が良く、難なく座ることが出来た。駅に着いたらセブンで唐揚げ買って、食って寝よう。おやすみ。

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2017/04/15 晴れ

景色の良い高台の大きなホールで高校の友人と遊んだ。そしたら突然に知った顔の怪しい人物らが入ってきてジャック。隙を見て逃げ出して階段を何度も飛び降りながら逃走劇。イヤホンが壊れたので替えた。

 

買っておいた菓子パンを食べて、お菓子を皿に開け、ココアを貰う。今日はクトゥルフ神話TRPGをする日で、この日を楽しみにしていた訳だが、いつもそうなんだけど私は準備が悪いので、寸前までかかってぎりぎり間に合わせることが出来た。ステミキとマイクが必要な気がする。正気の街は面白いシナリオだと思うんだけど、楽しんだ貰えたかあまり自信が無い。今度はでも、今回の続きの正気の月面をやりたい。あとはやり損ねた六月の花嫁、それから灰色に染まる街、そうだな、まだ色々あるので沢山やりたいな。同じゲームをわかる人がいると楽しい。ともかく今日はみんなすみませんでした。ありがとう。おしまい。

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2017/04/14 晴れ

寮。駅のホーム。大勢の人。マジックミラー。集団生活? 結局刃物を持つ展開になるな。

 

桜が頬に叩きつけられている。女性の髪が目の前で掻き乱れている。タバコの煙が見えないのに匂いが微かにする。朝がとても寒いのに日があると異様に暑くて夜は寒い。苦しいことや悲しいことを自覚するのが私は非常に得意で、嬉しいことを苦しく感じるのも得意なのであまり幸せが転がっていない。簡単で単純でまあるい塊のような幸せしか受け取れない。そういう形の受け取り口なので、違う形のものはうまく入ってこない。

 

腰から下が鉛になったように動かない、余りにも怠い。今日の陽気が仕事に向いていない。人の言葉も動作も嫌に気になる、いつもより2割くらい増しで感度センサーが働いている。気力の方がいつもの半分に満たないので、もう何も言うまいという感じで、勝手にひとりで後から拭っていく、という作業。お互いに人間だし、甘んじても軽んじてもいないということを信じたい。何にせよ今日はあまりにも疲れた。心が。もう早く帰って休みたかった。

 

パピルスに請求した無料の資料が郵送で届いていた。原稿のことを思い出した。

 

元気がない。昨日焼いたササミの上にスライスチーズを乗せてオーブントースターで焼いた。それを食う。全体的に欲が抜け落ちている。あまりにもエネルギーがない。明日の準備を軽く始める。

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