小噺

虚構を少々

2017/03/31 曇り のち 雨

目が覚めた。5:12。早いな。明瞭とした頭。一瞬で夢を忘れる。やむなし。数値が0の頭で視界を確認して、読み込むに連れて、「起きた」ことを自覚するに連れて、夢を忘れるメカニズム。次に起きたのは6:03。次、6:40。6:50。

 

夢。思い出すために30分かかる。誰かと一緒にいた。顔は知らないので知っている人ではない。でも知り合いらしい。舞台が昨日までと同じだった気がする。世界線の同じ夢ばかり見ている。

 

ニュートラルな頭にベースの音だけを詰めていく。音楽は良い。考えすぎる頭をそれだけでいっぱいにしてくれるツールの1つ。朝から機嫌が良い。このまま。このままだと良いのに。

 

剥がす。切る。片付ける。飯を食って、喋る。薬。珈琲は飲まない。「元気ないですね」。疲労だよ。会話による。どこまで蔑ろにして良いんだろう。効率。受け流し。美しさを考える余裕がない。曇り空だ。雨が降るんだって。降ったのはドロップス程度だった。小粒が頭に当たってコツコツ跳ねる。浮き沈みがあるのは仕方が無い。僕だって人間なんだ。

 

煙草車に乗って事務所。新しい仕事仲間と会う。私の最初の日とは大違いだという印象。状況もそうか。そもそもスカウト式だったし。緊張しているのか、喋らない。女性だった。様子を見ながら声をかける。不審がられては仕方が無い。一緒に酒を飲みに行く。青リンゴサワーを1杯。サングリアを1杯。もう1杯。会話は上々。女性の反応は薄いまま。仕事ぶりを早く見たい。あの、すみません、家に人を待たせているので。早々に帰る。ごめんな。明日は休日だ。

 

今すぐ。酩酊混じりの頭で、声を聞きたいという欲求。電話を。電話をかける。すぐに繋がるのは甘やかされているからのような。友人とお茶をしたらしい。仕事の相談を、会社の人にしたらしい。彼女はどことなく思いつめたような、一段落して不安なような声。私は唾を飲む。手のひらが熱い。太股が熱い。目尻が赤い。電車が揺れる。脳漿が混ざる。血液が薄くなっていく。距離が近づくにつれて、絶対に死にたくないという気持ちになっていく。欠伸をするのも、呼吸をするのも、下手糞になっていく。

 

生きている目。しきりに頷く男性。絵画のような影。読まれない本と、目を閉じて、イヤホン。空気の籠った髪型。草臥れたスマホケース。糸の解れた鞄。世界が濃縮された電車。たった今爆誕したのかもしれない。物理法則。酔いが覚めているのか、反対か、わからない。わからないよ。乾燥した指先。このままでいられるのだろうか。書かなければならない。映るものを大切にし続けたくても、同じことは繰り返せない。人間だから。同じ周波数で話すのに、通じない。同じ音は出せない。死にたい。

 

鼻根に星が溜まっている。流星を集めているんだって。「綺麗だから」。集めると願い事は叶わなくなるらしい。食べる。味がする。生きている。血を飲んでいる。喉の奥に残る。毎晩育てているのだ。誰の為に? 疲労を吸った髪を流す。トリートメントをつけて乾かして、櫛で梳く。彼女の髪は美しい。艶やかで、緩く波打っていて、私の言葉の所為で、肩よりも長い。

 

星を見たいんだって。明日は曇りだ。星を見に行こうと約束をした。