小噺

虚構を少々

2017/04/07 曇り のち 快晴

仕事だ。社長は社長なんだけど業務内容も仕事場もいつもと少し違う。高校の様な。やりたくない。だって全く見たこともない仕事なんてできないじゃないか、と、言い訳をしながらこなしていた。勿論言い訳をするので良い顔はされない。客と喋って住所を聞き出す。ここから5、6マイルのところだという。マイルってお前、突然。車でのあまりにも大雑把な道順説明をされた。ただし車はないので電車で向かおう、ああ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……、

 

夢だった。なあんだ夢じゃないか。海で首を絞め合う夢じゃないのかよ。起きて彼女を見送る。彼女も仕事が嫌だという。無理もない。本当に自分を目一杯可愛がって欲しいし、決して無理してほしくない。寧ろ家にいてほしい。そうもいかないので見送る。雨上がりの湿気の匂い。吐き気がする密度。背筋が丸まる。気圧かもしれない。

 

なんだか。新学期なので気持ちが嫌な感じがする。清々しい新しさは随分前に失ってしまった。突然に暑くなる。彼女はまた泣いていた。誰も思い通りにいかない。快晴だ。雲の量1割未満。野球少年。サッカー少年。ブランコとキックボード。女子。それから女性。ザリガニ釣ったりする子達はこの田舎には居てくれるのだろうか。始まり探し迷ったら夜。R.I.P.。犬の鳴き声。鳥の羽音はなぜあんなに恐ろしいんだろう。ひたすらに暑い。日はまだ少し高さがある。

 

私の我儘によって雨の降る前に花見を決行することになった。控えめな風が薄着に着替えた袖口から侵入してくる。焼き鳥と酒と摘みを携えて、ちょうど一年前、まだここに住んでいなかった頃、と、同じ場所に行く。拳程の蛾が音のなりそうなほどの羽を動かしてすごい早さで飛んでいく。恐ろしくて鳥肌が立つ。虫は苦手だ。そういえば無視も。手を繋いでやり過ごす。

 

カメラを構えてフレームを覗く。色と情報量のバランスを考えているこの時間が一番好きだ。何か気に入るものを探して歩いていると自然と足元に体が落ちていく。何を探していても結局、桜を見に来たのに、白くて小さな、鈴蘭のような花を見つけて、背中を丸めてレンズを向けるようなことをしている。酒を飲んだ方が良いものが撮れるのかもしれない。生きていることや死んでいることがそこにいなくても伝わってくるのが写真の好きなところで、そういう写真を撮りたいので、足元を撮影しているような気がする。草木に限らず。提灯の光でどうにも赤い写真になる。生命の色だ。満足して帰る。光ではなく真っ赤な、真っ赤に生える葉っぱを見る。家はもうすぐそこだった。余りにもグロテスクで少し胸に染みた。来年も何事も無く桜を撮りに行けたら良いな。全く同じ絵を撮って居られたら良い。その日まで変わらずに。