小噺

虚構を少々

2017/07/07 晴れ

何かになりたかった。そういった気持ちを持ったままだ。溶けても溶け出さない氷をグラスに入れる。きちんと冷やした水を飲む。それを命の代わりにしながら、何かを削ってものを作るのに、僕は何にもなることは出来ない。絵を描く時間が永遠に感じられる。このまま死ぬことがなければ。

 

電話がきた。18時以降に電話がかかってくる約束だったのを思い出した。彼は私に地獄を教えた男だ。矢鱈明瞭な声が同じ人間だとは思えなかった。地獄の最中にいた僕は彼が何を言いたくてわざわざ電話の約束を取り付けたのかが分からなかったし、同じ地獄の住人として楽しみにしていた。

 

暑さから指が動かない。料理をしながらイヤホンで彼の声を聞く。僕に見せずにして自分の自信を消費しながら生きていたらしい。「誰よりも自信が無かったことに自信があるんだ」。変化したのだと。それから、同じ変化をみんなに与えたいのだと。そんなことを2時間ずっと語っていた。この男が言っていることは1から10まで理解出来た。ので、8月の予定が決まってしまった。それまで生きていればやっと僕のブラックボックスは救われる。僕のあの時間にやっと肉がつく。

 

 虚無だなあ。何も無いことを感じながら梅肉巻とオクラサラダが出来ていた。引っ越す前と同じ食事がしたかったんだろうか。夏バテレシピというもので、夏にそれなので、なんの特徴もなく、ひたすら虚無だった。帰宅した彼女と食べる。味が悪くない。虚無だ。

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