行き摩り

虚構日記

2017/03/30 晴れ ときどき 曇り

起床予定時刻の1時間前に目が覚める。外から妙な音がして寝直せないので、そのままいつもの時間を迎える。体を起こすのがとても億劫。薬缶のけたたましい音。鳴ったっけ。台所で彼女が紅茶を淹れている。

 

タイムトラベルをするための道具を探していた夢だった。網でできた四角い袋と、テレビリモコンのような装置を使おうとしていた。なんだか後ろめたいような、わくわくするような気持ちだったのを覚えている。そういえば家族もいた。昨日の続きのような気もする。

 

珍しく紅茶を飲みきってしまった。彼女の紅茶は美味しい。今日の仕事は調子が良いような。熱っぽくて怠い。身体が火照っている方が、仕事に集中できている気がする。思考の読めない仕事仲間が1人。立ち居振る舞いを考えなければいけない。仕事の事だけを考えていたい。

 

昼ご飯がファミレス。ランチセットを食べ飽きた。でも安いから注文。フォークの背中にナイフで寄せてご飯をのせる。あれ、こうして食べるのは御法度だったか。確か文化の違い、国の違いだった気がする。構わない、私の国ではこうする。日本のファミレスの中でくらい好きに食べる。カレー風味のスープ。舌が「またか」と言う。風邪の処方薬を飲む。眠い。

 

天道虫は、てんとうむしは空の方に向かって登っていって、てっぺんで飛び立つのではなかったか。通路に居る。踏まないように拾って、指にのせて、そら、と上を向ける。飛ばないな。怯えているのだろうか。階下に降りて葉っぱに乗せてやった。不思議だなあ。仕事が終わる。

 

過去、お気に入りだった曲を発掘。そういえば、と思って聞いてみる。‪確かにこれは1曲リピートしてしまう。昔の自分に共感。‬こんなに自分の心地に合う曲は、恐らくこれからも現れないだろうという確信がある。誰にも内緒にしておこう。その1曲だけを繰り返し聞きながら、家へ向かう。

 

帰宅。私の方が早かった。今日は稀有なことが度々起こる。覚えていないだけか。彼女が考え事をしている。そんな顔をしている。そうか、もうすぐ週末か。疲れも溜まっているのだろう。料理をしながら、仕事の話をする。私には祈ることしか出来ない。一番良い形に、一番でなくても、今よりも良い形に収まりますように。せめて、安らぐ場所で在れたら良いのに。

 

グミを貰ってきたらしい。開ける。可愛いパッケージに果物のグミ。みかんの実の形をしたものが酸っぱい。「ビタミンCが足りていないんだよ」。そういえば、アセロラジュースを最近口にしていないことに気がついた。

 

絵を描かなきゃならない。絵を描きたい。でも、仕事の後って気合いが入らない。頭が痛い。それでも、明日も仕事だし、会話はするし、トイレも行くし、仕方ない。何かを負担に感じたくない。負担に思うのは仕事くらいでいい。その他は好きでやっていたい。だから趣味なんか仕事にしたくない。趣味を仕事にする事で、成功する人間は、そうすればいい。私はしない。それだけだった。何か新しいビジネスモデルを。何か見つけられたらいいなあ。

 

明日はキッチンペーパーを買ってくる。と、決めたことを思い出した。

2017/03/29 曇り のち 晴れ

呼吸がしやすくなっている。何度も目が覚めた気がする。くしゃみが酷いので花粉症かもしれない。様子を見る。乾燥に負ける。

 

夢は見た。家族と温泉に行った。昨日のことを覚えていた。温泉に行きたいかもしれない。でも、個室以外の露天風呂には別に魅力を感じない。

 

今日は外出。公共交通機関の遅延により遅刻する。時間を泥棒するなんて酷いことをしているなあ。バスも、私も。やっぱりくしゃみが酷い。カラオケボックスに入って、歌ったり、絵を描く。友人はとても歌が上手く、絵が可愛い。乾燥に負ける。マスクがとても有難い。頭痛。頓服薬を飲むと眠くなってしまって困った。思考と筆が止まってしまう。でも、楽しい。捻り出すのも楽しい、ちゃんと楽しい。歌うことも楽しい。歌う。傍らでモジュールの絵を描きながら、ボーカロイドは楽器であることを考えたりもした。彼らは言葉を発することの出来る楽器だ。そうだった。フリータイムを2時間残して切り上げる。駅構内は込み合っていた。手を振って友人と別れる。

 

化粧の落ちてやつれた顔が座って、寝ている。私は、その前に、吊革に捕まって立つ。1時間半の旅。喉の乾きに気が付く。重視すべき人間が自分1人になると、その1人の事に良く気がつけるようになる。誰かと時間を共有している時は、誰かのことを必死で考えている。1人。私が男性で、私が女性であるという強みはなんだろう。多分ない。人間である限り負けである。食用の卵のようなものだ。腐るのを待つだけだ。

 

あなたはどんなに離れても、いつだって君の周回軌道上。BUMP OF CHICKENの歌詞。隙あらば頭の中に流れる。これが支配している間は、あまり多くの事を考えずに済んでいる気がする。いつも何かを考えている。それはとても疲れることで、若しかするとあまり同じような頭の中の人はいないのかもしれない。いつも何かを考えて、それの理由がわからない。何かを閃かんとしているのか。自分は何をしたいのか。知識が芳醇でない私は、頭の中で同じ言葉を繰り返している。

 

「1日2回まで」の頓服薬を消費。頭痛や発熱に効くらしいのに。彼女も今日から調子が悪くなる。身体を摩りあって痛みを誤魔化す。カロナールは、どうしてか、眠くなる以上の効果は無い。ゆず茶を作って飲む。電気ケトルは昨日付で壊れてしまったんだった。薬缶で湯を沸かす。愛用のマグにはティースプーン4杯。柚子ジャムの分量、覚えている。

 

説明しない事の心地良さをこれ以上知ったら死んでしまう気がする。選んで切り捨て、切り詰め、切り詰め、それを綺麗だなと思ってしまった。失敗した。人と話すときに言葉を欠乏させる事。それは恐ろしいのできっと出来ない。まだ大丈夫。まだ。説明しないことは心地良い。140文字と日記の世界なら許されてしまう。大丈夫、きっと良い仕事が見つかるよ。きっと良いビジネスモデルを思い付くよ。きっと5年に間に合うよ。きっと上手くやっていけるよ、明日もちゃんと会話できるよ。生きて行ける気がする。息も出来ている気がする。深海の底だから、恐らく苦しむけれど、恐らく私は1人ではない。

 

頭が重い。夢を見ないといいなあ。鼻をかんだら良い加減にしろと皮膚が引き攣った。

2017/03/28 晴れ のち 曇り ときどき 雨

気温が低い。毎朝「寒いよ」と言葉にしている。暖かくならない。

 

夢を二つ。二つとも覚えている。誤解を解けず有害な細菌によって世界が崩壊してしまったのと、歌を歌ったのと。舞台も始まりも同じだった。

 

バスの中で鳴る電話の音が。煙草の煙が。マスクを経ずに10、15と繰り返されるくしゃみが。ストレスは外からやってくる。自分ではないものがストレスになる。良くも悪くも。ストレスを得ながら、放出しながら過ごしている。負のストレスに感じない自分以外はとても貴重だ。それを、毎朝送り出す。毎日家に帰ると待っている。

 

仕事をしながら、何か、必ず書こうと思っていたのに忘れた。気圧の変化で頭痛が酷いことだったかな。なんだっけ。気持ちのやり場があるというのは良い、という事だったような。日記を書くことを決めたのはほんの数日前だった。大事な友人の進言だ。ただ、それはきっかけで、ずっとそうしたかったのかもしれない。ただ書くだけのことが好きなのかもしれない。

 

多分近頃居心地が良くない。今日もあんまり。仕事の仲間の気持ちが読めない。浮き沈みを理解出来ない。それに乗せられて自分まで揺れている気がする。「○○さんと仲が良いですね」と言われる。「そうかな、普通だよ」。そう思う。

 

なにか、物語に関することを書き残しておきたかった。確か、事後情報を出してから、確定情報を提示して、「伏線」とする手段。これは心に閉まっておきたい。大切だと思う。つまり、慌てないこと。頭の中ではいつも何か考えている。みんな同じように、ずっと考えているのだと思っていた。恐らくそういうわけではないのだ。慌てないこと。焦らないこと。思っているより大切だと思う。そっとで良い。ずっと。私が生きていく上で利用できる時間は多すぎる。

 

家に帰ると癒されるのが常。今日も。仕事でどっと疲れたので頭も心も休めたかった。風邪のせいで、気圧のせいで、鼻詰まりのせいで頭が痛い。酸欠もあるのではないかと彼女が。違わない。この人は、私よりも私をわかっていることが多い。今日は泣いていない。とても明るく振舞っている。甘やかすと目が輝く。「星を飼っているの?」と聞いてしまって、あ、と思った。私は昨日のことをしっかりと覚えている。文字にすることは素晴らしいことのようだ。「うん」。

 

ゆず茶を作って飲んだ。これは相棒との思い出の飲み物のような気がしている。勝手に。風邪を引いて熱を出した日に、相棒は、遥々私の家まで来て、ポストにゆず茶を入れて帰っていった。あの頃は泣くような人間ではなかった。久しぶりのゆず茶は何だか懐かしかったし、遠い海を思ってしまって寂しい気持ちもした。

 

額に彼女の手があてられると、すぐに、頭痛は引いていった。

2017/03/27 雪 のち 曇り のち 晴れ

底冷えと乾燥を感じて目が覚めた。春休み。妹と会う約束があるので起きる。彼女を見送って呑気に支度をした。定刻にはつかず待ち合わせに少し遅れる。身内なので気が抜けていたやも。

 

今日は鞄を。それから私が入学の時に欲しかった色々を買い与えたかった。金をやるのは簡単に出来る。それが何に消えるかをそばで見ることは出来ない。ものにして手に持たせたかった。ホームシックだった。

 

スターバックスに入ったのは始めてらしかった。物珍しそうにココアの上に乗った甘くない生クリームを食べていた。可愛い。彼氏が出来たらどんな面をしてやろう。私に会わせてくれるのだろうか。どうだろう。期間限定のものは頼まなかった。甘くて胃にたまるものを飲みたがった。

 

話は弾んだ。ブックオフが好きらしい。漫画を何冊か買っていた。一冊しかわからなかった。6年の差は大きい。ゲーセンにも行った。ゲームはまだ私の方がうまい。やきもきしながら妹のワンコインを見送った。どうにも可愛らしい。手元で面倒を見たかった。惜しいことをした。そうは言うが、後悔はない。

 

帰り際には母と電話をした。母親は私と彼女のことを何と思うだろう。まだ打ち明けられずにいる。暫くはきっとこのままだ。私はこのまま家を出るだろう。それは構わないらしい。彼女に伝えそびれていることを相談する。まだ彼女だということは教えていない。知らないでいてほしい。知ってほしいような。そんな雰囲気を掠めている。

 

帰宅するとすぐに彼女も帰ってきた。彼女はいつも泣いている。飯を食う前だったり、風呂の後、私が髪を乾かしてやった後だったり、いつも泣いている。気がする、ここの所、涙を見ない日がない。ずっと前にひとつ言ってしまった失言を、私は気にしていた。言葉にしてみる。案外下らないような。彼女は聞いてくれたし、また、鼻根に水溜りを作った。瞳に、星を飼っているの。それを、今は、私が育てていた。

 

母親は「素敵な出会いだね」と言ってくれた。